自転車のロードレースと言うのは空気抵抗にどう対応するのかが問題なのである。低い前傾姿勢や空力を考えたバイクやウェアなど、空気抵抗をいかに削減するかを考えられたものなのであし、集団でひと固まりになって走るのも空気抵抗をなるべく避けるための手段であり、体力を温存するために必要な処世術なのである。
単純な向かい風であれば後ろに居るのが楽なので、後ろから付いて行けば問題ないのだが、追い風だったり横風だったりすると話はまた異なる。追い風だと前に居る人の負担が低いので前の人が強いと後ろに付いていく人も頑張らないといけない。そこで千切れていってしまうわけである。
さて、この日は横風だったわけであるが、横風の場合は風よけ役の人は風上に居て、その恩恵を受ける人は風下側に陣取って道幅一杯に広がるのであるが、道幅と言っても限度があるので、望む人すべてが風よけの恩恵を受けられるとは限らない。そうすると漏れた人たちでもって2列目、3列目...となるのだけれども、1列目の人たちがスピードアップした時にそこに2列目以降の人たちが付いて行けるかは頑張り次第という事になってしまうのである。これが横風分断作戦と呼ばれるものである。
この横風に強い人たちって言うのは独走力のあるタイムトライアルスペシャリストのような人達だったり、大柄なルーラー達である。逆に軽量なクライマーたちはそこの点で不利でな要素がある。モビスターとかアスタナあたりのチームは強力なクライマータイプの選手は多いが平坦を引く選手が少なく、横風分断によって平坦ステージにタイムを失うことがままあるわけであるな。スプリンター系チームも集団を引いていないチームとかは集団後ろでまったりしてることもあるのでわりと餌食になりやすい。
そんなわけで、総合狙いのポッツォヴィーヴォとかアスタナのミゲルアンヘル・ロペスやモビスターのマルク・ソレルなどが遅れてしまったし、スプリンターもキッテル、カヴェンディッシュ、クリストフが遅れてしまったわけだ。スプリンターチームはやはりチーム力が低いほど後ろで取り残される傾向だよね。
そんな感じでチーム・スカイが先導した横風分断作戦によって集団は小さくなり、終盤では平坦ステージとは思えないくらいに人数が絞られていた。残り3キロで救済措置が取られる区間に入ってしばらくするとクイックステップのジルベールがアタックし、そのまま残り1キロを切る。
ただ、他のスプリンターチームが黙っているわけない集団は懸命に追走してジルベールを吸収、ピュアスプリントでは勝ち目のないコルブレッリなどが早めにスプリントを開始するが、その後ろから発射したユンボのフルーネウェーヘンが先着、それとタイヤ差でロットのユアンが惜しくも2位となった。
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