ロードレースを題材にした漫画やアニメの中で最も有名なものは弱虫ペダルって言うのがありましてね、現実正解では到底あり得ないであろうダンシングをしたり、高回転でペダルを回したりとか言う怪物と言うよりも妖怪と言う方が正しいキャラが登場するし、熱い展開を繰り広げるわけでありまして、そりゃまぁ、熱狂する人も多いよねと思うわけです。
現実世界にはそんな妖怪のような選手は居ないよ。と言いたくなるわけですが、かつてのカンチェラーラとかは宇宙人と呼ばれてたり、ビジュアルから海賊とか呼ばれてたり、現役選手でもハルクポーズをしたりメッシーナのサメとかの異名を持つ選手は居るわけですね、その選手も怪物のような選手なのでしょう。
で、今回のアムステルゴールドレースではまさにそんな怪物の存在がありました。漫画でもその原稿は編集に却下されるよとか言う言い回しがありますが、まさにそんな漫画でも却下されるような衝撃のラストがあったのでした。まさに事実は小説より奇なりと言った感じですね。
レース終盤でクイックステップのジュリアン・アラフィリップとアスタナのヤコブ・フルサングが抜け出し、その後方にスカイのミカル・クウィアトコウスキー含む追走、さらにメイン集団が続く感じでした。ストラーデビアンケからこのアラフィリップとフルサングの二人の抜け出しと勝負が続いていて、お互い好調だなと思うし、お前らほんと仲が良いな!と思うわけですね。
で、この二人はゴールスプリントではアラフィリップが有利なので、フルサングとしては先にアタックを仕掛けて振り切りたい感じがあるのです。よって終盤にはフルサングのアタックが頻発し、それに対応するための牽制が始まるのです。アタック&牽制になると加速したり減速したりしながら平均速度としては落ちるので、後続が追いついてきてしまうわけですね。
そんなこんなで、この二人にまずは追走の中から単独でクウィアトコウスキーが追いつきます。さらにその後ろではメイン集団から抜け出していたコレンドン・サーカスのマチュー・ファンデルプール率いる集団が追走を吸収しながら諦めずに追いかけてきています。
先頭に加わったクウィアトコウスキーは追いついた勢いのままアタックしますが、それに付いて行けば楽にゴール前まで行けると踏んだアラフィリップとフルサング。対してマチューは後ろを振り返りつつ気にしつつも前を見据えたままの鬼引きを見せます。これで勝てなくてもマチューの人間としての評価はうなぎのぼりだったでしょう。ところがこのままの勢いでスプリント体制に入ったアラフィリップとフルサングをもそのまま飲み込んでしまうようなスプリントを開始するのです。
最終的にはマチューの後ろにはマチューを風よけにツキイチでついてきた集団もいるのですが、このマチューの鬼引きとスプリントに引きちぎられるのを回避するのが精いっぱいで、横に並ぶことも許されずにゴールを駆け抜けたのでありました。うん、これは怪物ですわ。
過度な牽制の恐ろしさと、マチュー・ファンデルプールの怪物さ加減をまじまじと見せつけられたわけで、このレースは一見の価値があるものでした。まさに編集に却下されるような展開だったわけで、スポーツって面白いよなと思う瞬間でありました。
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